HEAT20とは?注文住宅で重視したい断熱性能とZEHとの違い
公開:2024.06.27 更新:2025.01.30
注文住宅を検討する際、断熱性能は非常に重要な要素です。近年、高断熱住宅への関心が高まる中、HEAT20やZEHといった基準も注目されています。HEAT20は、住宅の高断熱・高気密性能を追求し、快適な室内環境を提供することを目的としています。
一方、ZEH(ゼロエネルギーハウス)は、エネルギー自給自足を目指す基準です。これらの違いを理解し、注文住宅に求める性能に応じて最適な選択をすることが重要です。
目次
HEAT20の特徴とZEHとの違い
HEAT20(ヒート20)とは、住宅の高断熱化・高気密化を目指す取り組みの一つで、快適でエネルギー効率の高い住宅を実現するための指標です。近年、住宅の省エネ性能に注目が集まる中、HEAT20やZEH(ゼロエネルギーハウス)という言葉を耳にする機会が増えましたが、これらの違いを理解することが重要です。
◇HEAT20とは
HEAT20は、日本の住宅における高断熱・高気密性能を追求するためのプロジェクトで、住宅のエネルギー消費を抑えつつ、快適な室内環境を提供することを目指しています。このプロジェクトは、建築士や住宅メーカー、研究者などが参加しており、住宅の断熱性能を評価するための基準やガイドラインを策定しています。
具体的には、住宅の外壁、屋根、床、窓などの断熱性能を評価し、高い基準をクリアすることを求めています。また、HEAT20は、居住者の快適性を重視し、夏場や冬場でも快適に過ごせる室内環境を提供することを目指しています。
◇HEAT20とZEHとの違い
HEAT20とZEHは、いずれも住宅の省エネ性能を高めることを目的としていますが、そのアプローチや目標には違いがあります。HEAT20は、主に住宅の断熱性能と気密性能を高めることに焦点を当てており、住宅全体のエネルギー消費を削減することを目指しています。
具体的には、暖房や冷房のエネルギー消費を抑えるために、高性能な断熱材や窓を使用し、建物の外皮性能を向上させることを重視しています。
一方、ZEHは、住宅のエネルギー消費をゼロにすることを目指す取り組みです。これには、住宅の断熱性能や気密性能を高めることに加え、太陽光発電などの再生可能エネルギーを利用して、住宅のエネルギー消費を賄うことが含まれます。
ZEHは、エネルギーの自給自足を目指しており、エネルギーの供給と消費のバランスをとることが求められます。そのため、ZEHでは、断熱性能の向上に加えて、エネルギーを生成するための設備の導入も重要となります。
日本の断熱性能は遅れている?HEAT20が注目される理由

画像出典:フォトAC
日本の住宅の断熱性能は、他の先進国と比較して遅れているとされています。気候変動への対応やエネルギーコストの削減が求められる中、HEAT20が注目される理由は何でしょうか?先進国の中での日本の断熱性能の現状と、HEAT20が注目される理由について解説します。
◇先進国の中でも断熱性能が低い日本
日本の住宅における断熱性能は、先進国の中でも特に低いと指摘されています。日本の気候は四季が明確に分かれ、特定の気候条件に最適化された断熱技術の導入が難しいため、断熱性能が後回しにされてきた歴史があります。
加えて、過去には家の通風や自然換気が重視され、断熱性能への意識や技術の進歩が遅れていました。日本の建築基準法も長らく具体的な断熱性能基準を設けておらず、建築業界全体の断熱に対する取り組みが進んでいませんでした。特に戦後の住宅建設ブームで建てられた多くの住宅は、現在の断熱性能基準に適合していない状況が続いています。
◇HEAT20が注目される理由
HEAT20が注目される理由は、その非常に高い断熱性能にあります。特に寒冷地では、良好な断熱性能は生活の快適さやエネルギーコストの節約に直結します。
HEAT20のガイドラインは、住宅の外壁や窓、屋根、床などの断熱性能を向上させ、エネルギー消費を大幅に削減し、住民に快適な生活環境を提供することを目的としています。さらに、HEAT20はエネルギー消費の削減だけでなく、住環境の質の向上にも焦点を当てています。
高断熱・高気密の住宅は、冬は暖かく夏は涼しい快適な室内環境を実現し、住民の健康にも良い影響を与えるとされています。このような性能向上は、実際の生活での快適さや経済的なメリットをもたらし、強い関心を集めています。
◇脱炭素化に向けた動き
日本は2020年10月に「2050年カーボンニュートラル」を掲げ、国全体で脱炭素化に向けた取り組みを進めています。カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを指し、その実現には住宅から排出されるCO2の大幅削減が不可欠です。特に、断熱性能を高めてエネルギー消費を抑えた住宅の普及が求められています。この流れは日本だけでなく、世界各国でも進んでおり、HEAT20が定める高い断熱性能基準は、住宅分野の環境対策として注目を集めています。
低い断熱性能がもたらす見過ごせない影響
日本の住宅における断熱性能の低さは、エネルギー効率の悪さだけでなく、住民の健康や生活の質にも深刻な影響を与えます。こうした問題に対応するため、国や自治体は省エネ基準の強化や独自基準の導入を進めています。
◇平成28年省エネ基準
平成28年省エネ基準とは、2016年に改定された日本の省エネ基準であり、住宅や建築物のエネルギー消費性能を向上させるための指針です。この基準では、断熱性能や設備機器の効率が評価され、住宅のエネルギー効率を高めることが目的とされています。
しかし、現時点ではこの基準は義務ではなく、2025年から義務化される予定です。2025年に開始される適合義務化では、現行の平成28年省エネ基準が義務化され、新築住宅や建築物はこの基準に適合することが求められます。
◇省エネ基準では不足?独自の基準を設けた自治体も
省エネ基準が国で定められている中、一部の自治体は独自の高い基準を設けています。例えば山形県の「やまがた健康住宅基準」は、国の基準を上回る厳格な要件を持っています。これは、山形県が地域特有の課題、特にヒートショックによる死亡者数の多さから、積極的な省エネ活動を推進してきた結果です。
この基準では、「HEAT20」の基準を参考にしており、特にUA値(熱貫流率)において国の基準よりも厳しい要求をしています。自治体が独自の基準を設ける理由は、地域の気候や生活環境に応じたより適切な住宅環境の提供を目指すためです。
また、これにより地域経済の活性化や住民の健康増進を図る効果も期待されます。自治体ごとに異なる基準が存在することで、より地域密着型の住宅建築が進み、住民の生活の質が向上するというメリットもあります。
◇2024年4月から始まった省エネ性能表示制度
2024年4月に開始された「省エネ性能表示制度」は、建築物の省エネ性能をわかりやすく示し、購入や賃貸の際に比較・判断しやすくするための新たな仕組みです。改正建築物省エネ法に基づいて導入され、販売・賃貸事業者に対し、広告やカタログなどで省エネ性能を表示することを努力義務としています。
対象は新築物件のほか、再販売・再賃貸される物件で、2024年4月以降に建築確認申請を行うものが該当します。売主や貸主、サブリース事業者が対象となり、省エネ性能ラベルやエネルギー消費性能の評価書が発行されることで、消費者が物件ごとの省エネ性能を簡単に比較することが可能です。
このラベルには、省エネ性能を示すBEI(建築物エネルギー消費性能指標)や、断熱性能を表すUA値などが記載されており、建築物のエネルギー効率を視覚的に把握できる仕組みになっています。省エネ性能の高い建築物の普及を促進し、地球温暖化対策やエネルギー消費の削減につなげることを目的としており、結果として光熱費の削減や快適な住環境の実現にも貢献します。
なお、この制度に従わない場合、国が勧告を行うことがありますが、既存の建築物はその対象外です。この取り組みにより、省エネ性能が建築物の価値を判断する重要な基準として広まり、持続可能な社会の実現へとつながることが期待されています。
HEAT20の基準とは?
HEAT20では、日本を8つの地域に分け、それぞれの地域で室内温度が一定の基準を下回らないようにするための断熱性能の目安を設定しています。この基準は、「快適」「健康」「経済的」に暮らすことを目指しており、断熱性能は「G1・G2・G3」の3段階で評価されます。中でも、G3が最も高い断熱性能を表しています。
◇地域区分
地域区分とは、国の「省エネ基準」に基づいて設定された8つの気候区分を指し、日本全国を各地域の気候特性に応じて分類したものです。北海道や東北など寒冷地では、より高い断熱性能が求められるため、外皮性能の基準値が厳しく設定されています。HEAT20では、この地域区分ごとにG1・G2・G3の3つのグレードがあり、断熱性能の指標となる「UA値(外皮平均熱貫流率)」によって分類されます。地域ごとの気候に適した基準をクリアすることで、快適でエネルギー効率の良い住環境の実現が可能です。
◇HEAT20のグレード
HEAT20では、断熱性能を「G1・G2・G3」の3つのグレードに分けています。これらのグレードは、地域ごとに異なる気候条件に合わせて設定されています。
G1は最も基準が高く、冬期間の最低体感温度が地域によって異なりますが、「1地域と2地域」では約13℃を下回らず、「3地域〜7地域」では約10℃を下回らない性能を持ちます。
G2はその次に位置し、冬期間の最低体感温度がさらに厳しく設定されています。「1地域と2地域」では約15℃を下回らず、「3地域〜7地域」では約13℃を下回らない性能が求められます。
G3は最新の基準であり、すべての地域で冬期間の最低体感温度が15℃を下回らない性能を持っています。これにより、より高い断熱性能が求められ、室内の快適性が確保されます。
これらのグレード設定により、HEAT20は地域ごとの気候特性に応じた最適な断熱性能を提供し、住宅の室内環境をより快適に保つことを目指しています。
HEAT20の基準をクリアすることで期待される効果とは?
HEAT20の基準をクリアした住宅は、高い断熱性能を備え、室内の温度変化を最小限に抑えることで、快適で健康的な暮らしを実現できるでしょう。冬は暖かく夏は涼しい環境を維持しやすく、冷暖房の効率も向上するため、省エネ効果も期待できます。また、ヒートショックのリスク軽減や結露・カビの抑制など、健康面でも大きなメリットがあります。
◇冬は暖かく夏は涼しくなる
HEAT20の基準を満たした住宅は、高い断熱性能により、室温を安定させやすく、冬は暖かく夏は涼しい快適な環境を実現することが可能です。特にHEAT20 G2レベルでは、冬の最低室温を13~15℃に保てるため、急激な温度変化によるヒートショックのリスクを軽減できます。体への負担を抑え、健康的な暮らしをサポートします。また、冷暖房の効率が向上することで、エネルギー消費を抑え、光熱費の節約にも繋がるでしょう。
◇光熱費を削減できる
外気温の影響を受けにくく、室内の温度を快適に保てるため、冷暖房の使用頻度が減り光熱費の大幅な削減に期待できます。断熱性能の低い住宅に比べ、年間で数万円以上の節約につながるケースも珍しくありません。また、少ないエネルギーで快適な室温を維持できるため、省エネ効果も高く、環境負荷の軽減にも貢献できます。電気やガス代の高騰が続く中、光熱費を抑えた家づくりの重要性がますます高まっています。
◇結露やカビを抑えられる
住宅の表面温度が下がりにくいため、室内の水蒸気による結露を抑えやすく、ぜんそくやアトピー性皮膚炎などの健康リスクの軽減にも繋がるでしょう。また、結露は壁の表面だけでなく内部でも発生し、放置すると住宅の構造を劣化させる原因となります。HEAT20基準の高断熱住宅なら、壁内部の温度を適切に保ち、結露の発生を防ぐことで、住まいの耐久性を長く維持しやすくなります。
◇ヒートショックを防げる
ヒートショックとは、急激な温度変化によって血圧が大きく変動し、心筋梗塞や脳卒中などの健康リスクを引き起こす現象です。特に冬場、暖房の効いたリビングから冷えた脱衣所や浴室へ移動する際に発生しやすく、高齢者にとって大きな危険となります。HEAT20基準の住宅は、高い断熱性能によって室内の温度差を小さく保ち、ヒートショックのリスクを大幅に軽減することが可能です。さらに、結露やカビの発生を抑えることで、健康的で快適な住環境を維持する効果も期待できます。
熊本でおすすめの注文住宅会社を紹介
耐震性や断熱性、省エネ性能に優れた住宅は、快適な暮らしを支え、光熱費の削減にもつながります。各社の特徴や強みを比較しながら、理想の住まいを見つけましょう。
◇新産住拓
新産住拓は、1964年の創業以来、熊本で6,000棟以上の住宅を手がけてきた実績あるハウスメーカーです。地域の気候・風土を熟知し、快適でエネルギー効率の高い住まいを提供しています。
特に断熱性能に優れ、ZEH基準(UA値0.6以下)を超える「HEAT20 G2グレード」(UA値0.46以下)を標準仕様としています。これは北海道の省エネ基準と同等で、夏は涼しく冬は暖かい快適な室内環境を実現することが可能です。エアコンの使用を抑えることで、光熱費の削減にも貢献しています。また、高断熱仕様により、停電時でも室温を一定に保ち、災害時も安心です。
国の「ZEH★★★★★★」認定も取得し、持続可能な住宅づくりを推進する新産住拓は、熊本で理想の住まいを実現するのに最適なハウスメーカーです。
◇住友林業
住友林業は、理想を叶える自由設計と高い断熱性能を兼ね備えた注文住宅を提供するハウスメーカーです。設計満足度99.2%という高評価を誇り、一邸一邸、家族の想いを形にする家づくりを行っています。
特に断熱性能に優れ、「306°TRIPLE断熱」を採用。木材の持つ高い断熱性を活かし、壁・天井・床を高性能断熱材で隙間なく覆うことで、室内の快適さを保つことが可能です。さらに、アルゴンガス入り「Low-E複層ガラス」を標準装備し、外気の影響を受けにくい魔法瓶のような住環境が実現できます。
また、UA値(外皮平均熱貫流率)は国の「ZEH強化外皮基準」を超える高水準を達成しました。寒冷地レベルの断熱性能を熊本でも提供しており、冬は暖かく、夏は涼しい快適な住まいを実現できます。健康的な室内環境を維持できる住友林業の家は、快適性と経済性を兼ね備えた理想の住まいと言えるでしょう。
◇ダイワハウス
ダイワハウスは、最新技術を駆使し、快適性・耐震性・デザイン性を兼ね備えた住まいを提供しています。特に「遮熱外張り断熱通気外壁」による高い断熱性能が特長です。
従来の「充填断熱」に対し、構造体全体を外側から断熱材で覆う「外張り断熱」を採用しています。さらに遮熱技術を組み合わせることで、外壁からの輻射熱を効果的に跳ね返し、室内温度の安定を実現することが可能です。この技術により、室内側の壁面温度を最大2℃下げ、快適性を向上させています。
また、ダイワハウスの「xevo BeWood」は、断熱性能の指標である「断熱等級5」を標準仕様でクリアしました。これは国のZEH基準を満たす高水準で、光熱費の削減と快適な住環境を両立しています。そして、長期保証と充実したアフターサービスにより、安心して長く暮らせる住まいを実現できるでしょう。
◇三井ホーム
三井ホームは、高品質な居住環境を追求する注文住宅メーカーです。全館空調と高断熱・高気密な構造を組み合わせ、開放的で快適な住まいを実現しています。
特に断熱性能には「MOCX WALL工法」を採用し、住まい全体を高断熱・高気密で包み込むことで、室内の温度を一定に保つことが可能です。さらに、日本最高レベルの断熱性能を誇る「断熱等性能等級7」に対応した「MOCX THERMO」も導入しています。これにより、夏の暑さや冬の寒さをしっかり遮断し、快適な住環境を提供します。
また、全館空調「スマートブリーズ」との組み合わせにより、ホコリや花粉を抑えつつ、家全体の空気を清潔で快適に保つことが可能です。高い省エネ性能でランニングコストを抑えながら、快適で健康的な暮らしが実現できます。
HEAT20は、日本の住宅における高断熱・高気密化を目指す取り組みで、エネルギー消費を抑えつつ快適な室内環境を提供する指標です。一方、ZEH(ゼロエネルギーハウス)は、住宅のエネルギー消費をゼロにすることを目指す取り組みで、再生可能エネルギーを活用して自給自足を目指します。
日本の住宅の断熱性能が他国に比べて遅れている背景には、気候条件の多様性や建築慣習の影響があります。しかし、近年では気候変動やエネルギー効率の改善が求められ、HEAT20のような高性能な断熱材や窓の導入が推奨されています。
HEAT20の採用により、冬は暖かく夏は涼しい快適な室内環境が提供され、居住者の健康や生活の質が向上します。さらに、エネルギー消費の削減と二酸化炭素の排出量の低減に貢献し、地球温暖化対策にも寄与します。
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